うたうポリゴン

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『ポケモンSV』レビュー:オープンワールドとの親和性は高いが、Switchゆえの限界も。次ハードが本命?

 私は数年前に『ポケダンDX』にハマり、それからポケモンを知るようになったが、ゲームの本編というか本流の作品をプレイするのはこれが初めてである。したがって過去作との詳細は比較はできない。「剣盾のほうがよかった」という声が多いのは残念だが、実際どうなのかは私も気になるところ。

概要・ゲーム紹介

 言わずと知れた、ポケモン世界のポケモントレーナーの物語。今回最大の特徴はシステム的には「オープンワールド」、ストーリー的には「学園もの」となる。オープンワールドは『剣盾』→外伝『アルセウス』で徐々に取り入れられ、今回で完全版といった感じ。「学園もの」には裏の台所事情もありそうだが、別にやっていることは同じで特にゲーム性に影響はない。本編のメイン3ルートを約20hで、最終編までで約22hでクリアしたので、そこまでのレビューを書く。

ここがイイ

新しいポケモンと新しい地方

 シリーズファンにはこれがあるだけで十分魅力的だろう。今回戦術面では「テラスタル」が新要素(メガシンカ、Zわざ、ダイマックスに続く切り札)となる。対戦ガチユーザーではないのでそこの評価はできないが。

快適な操作性

 基本操作のUI周りに大きな不満はないが、プレーヤーのプロフィールがマップ画面からの表示というのが謎。また、「イマイチ」に挙げたが動作は微妙。

没入感のあるオープンワールド

 広大なマップを宝探しするだけだと飽きてしまうが、ポケモンのゲームなので「場所・時間帯(ゲーム内時間)によって出現ポケモンが違う」という武器がある。そのため、オープンワールドとの親和性は高い。大自然(砂漠から雪原まで揃っているのはRPG世界のお約束)とポケモンが調和している。また、冒険の拠点となるポケモンセンターが今回は屋外で、マップ切り替え不要。そしてカウンターが正面背面どちらからでもアクセスでき、3Dゲームにありがちなストレスを軽減している。高所から、ポケモンセンターの屋根に着地するのは楽しい。

快適な移動

 最初から主人公は乗り物(コライドン/ミライドン)を持っており、移動は快適。ロック機能解放でさらに快適になる。滑空はとても楽しいし、習得後はマップ選択瞬間移動「そらをとぶ」も可能になる。

快適なお任せバトル

 詳細は以下だが、レベル上げがとても快適(完全放置とはいかないがセミオートでいける)にでき、敗北→レベル上げのやり直しにストレスがない。
パルデア地方の探索に便利な「レッツゴー」 | 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』公式サイト

意外といいストーリー

 ストーリーにあまり期待はしてなかったが、「スター団」討伐編は思ったよりよかった。万人向け、親目線で子供でも安心なところはさすが任天堂である。ものすごい悪人やクズは出てこないし、作中の大人は皆まともという世界観はおそらくシリーズ共通。ジム巡りは接待プレイ、茶番感がひどいがまあ昔からこんなものだろう(本編クリア後の再戦で本気出すという、ゲームのボスキャラあるあるではある)。

適度な本編ボリューム

 本編で22h程度と長すぎず短すぎず、ちょうどいいボリューム感(クリア後のストーリーもある)。広大な世界なので、DL追加コンテンツでまだまだ楽しめそうな余白を残している。

大きい町は少なく、広すぎない世界

 スタート地点の学園都市テーブルシティの巨大さには圧倒されるが、以後そこまで大きい町は出てこない(全部で「シティ」が3つ、「タウン」が9つ)。学園内はコマンド移動と、プレーヤーが混乱しないよう適度なバランスを取っている。

声優なし

 任天堂ゲームではおなじみだが、やはり強調しておきたい。ゲームに声はいらない。

ここがイマイチ

キャラクターが地味かつ変

 以前書いた記事の通り、やはり少し違和感はある。個人的には男女問わずヴィジュアル的に惹かれたキャラが一人もいない。王道的なカッコイイ・可愛いキャラが不在で、ぱっと見で性別不明のキャラが多すぎて胸焼けする。モブキャラにオッサンが多かったりするのは気にならないが、ルッキズムのないエンタメって、イマイチよね。キャラの見た目なんてプレイに影響はないと思ってたが、長時間(ゲームなので)特定の思想を見せつけられることでフラストレーションは蓄積されていった。ポリコレをやるなら人種・民族・年齢やLGBTだけでなく、車椅子キャラでも出せばよかったのに。ポケモンはトレーナー自身が戦わないから、RPGでは珍しくキャラに障害があっても成立するのだが。
 ジェンダー批評的なことを書くと、ポケモン世界、作中のテンプレジェンダーこそなくすべきではないのか。


 また、学園ものにしては同年代のキャラクターが少なく、もう少し多くてもよかったか。ただジムトレーナー+四天王+チャンピオンだけで10人以上もいるので、キャラが多いと覚えづらくごちゃごちゃしすぎてしまう面はある。
 余談だがアオキがジムリーダーと四天王を兼任しているのは不自然で、キャラクターが一人間に合わなかったか、急遽ボツになった疑惑がある。ちなみにアオキ、いいキャラだがポリコレ的には日本人の大人男性=サラリーマンというステレオタイプを助長しており、よろしくないのでは?(国内では社畜自虐ネタで通るが、海外で)

図鑑機能がしょぼい

 UIはいいのだが、図鑑で検索、タイプ別の表示などができない。ソートはあるが、重さ・高さなど誰が使うんだという機能ばかり(種族ステータスでソートさせてほしい)。作中ではスマホアプリという設定なので、あまりにお粗末。攻略サイトを見ろということだろうか。公式のweb図鑑は、まだSVのポケモンは入っていない→【2023/1追記】追加された。
zukan.pokemon.co.jp

「自由な冒険」は茶番

 公式サイトでも「自由度の高さ」をウリにしているが、これは嘘。各クエスト(3ルートの冒険8/5/5)の敵の強さはちゃんと決まってるから、結局3つのルートをそれぞれ弱いところから進めるしかない。フリーシナリオ的にしたはいいが、このへんは造りが甘いというか「事実上ほぼルートは決まっている」という認識でいた方ががっかりせずに済む。クエストはロック機能の解放になっているので、無視してポケモン集めだけをするというわけにもいかない。本当に自由にどこへでも行けるのは本編クリア直前あたり、移動機能がフル解放されてから。

モカットができない、テンポが悪い

 バトルのわざ演出カットができず、長くなりがちでテンポが悪い。特にテラスタルが長くうっとうしい。四天王連戦で特にそれを感じる。ストーリーの会話も既読スキップ機能なし。シンボルエンカウントからバトル開始までの時間も少し気になる。

処理落ち・強制終了

 処理落ちはSwitch Liteではちょくちょく発生する。一度だけフリーズ、強制終了したこともあった(【11/28追記】その後もう一度発生。いずれもバトル中ではなくフィールド)。これはもうSwitchの限界もあるだろうが、近年のオープンワールドはどうしても要求スペックが張る。初代Switchでテレビ大画面では厳しいのではないだろうか。逆に次世代になれば問題なくなり、楽しみではある。処理落ちはまだ許せるが強制終了はストレスがひどいので今後のアップデートに期待というか、してもらわなければ困る。
【2023/2追記】発売から3ヶ月、2/28にようやく更新されたが、これでどこまで解消されるかはユーザーの声を待ちたい。
www.pokemon.co.jp

マップ・ナビ機能が貧弱

 これはオープンワールド系ゲーム全てに言える不満なのだが、目的地を設定しても方向しか表示されず、実際に移動できるのかどうかが試さないとわからない。高低差があると、平面図だけでは目的地もわかりづらいことがある。ナビが強すぎると自由な冒険感はなくなってしまうし、バランスは難しいがマップはもう少しなんとかなったと思う。さらにミニマップが見づらい。
 また、リアリティ+ポケモンの出現にも関わるので仕方ないが、ゲーム内時間で夜になると画面も見づらい。また、サイズが小さいポケモンは見落としやすいため意図しないエンカウントが多発する。マップ選択瞬間移動「そらをとぶ」も、もう少し移動可能ポイントを多くしてほしかった。
 【12/3追記】動作・操作感はこちらの記事に詳しい。正直、今からリメイクを期待したくなってしまうデキ。
jp.ign.com

ゲームに慣れてない人は厳しい

 上記からイマドキのオープンワールドRPGや、3Dアクションゲーム(左右スティック操作)に慣れてない人には敷居は高くなっているので、注意が必要。逆に「このポケモンSVのおかげで馴染めた」という人も出るだろうが。

学園ものとしてはチグハグ、失敗作【2023/5追記】

 キャラクターの項でも書いたが、教師たちもなかなか個性的な見た目をしていて濃い。それはいい(例によって数学教師が女性、家庭科教師が強面のオッサン、バトル学(体育のようなものか)教師が女性と露骨な反ステレオタイプ)のだが、せっかくキャラがあるのにもったいない。
 やり残していた授業と教師とのサブイベントを消化したが、中身のない授業(ほとんどゲーム内知識)とテスト、サブイベントは移動して会話するだけ、それも本筋とはほぼ無関係であり、なんとも虚しい。すぐにいつもの冒険をしたい従来のファンに配慮したんだろうが、各授業の1回目くらいはオープニングで強制でよかったんじゃ? 学園ものとしての要素があまりに薄すぎる。同級生キャラの不在はここでも大きく、主人公に友達がいなくてかわいそうになってくる。今回はあくまで、変化球としての舞台装置だったのだろうか。
 教師陣とは本編クリア後の学校内のバトル大会で戦うこともでき、まだからみは多い方だが、ジムリーダーにしろスター団にしても、「出てきてただ倒されるだけのキャラクター」が多すぎる。これはシリーズの元からの悪癖なのかは知らないが、せっかくデザインしたキャラが非常にもったいない。アニメや派生作品で再利用する前提?
 余談だが、ガンダム『水星の魔女』との共通点でもある。シリーズものの新作を学園ものにしたがるトレンドでもあるのか?


 余談ついでにガンダムで例えると、『SEED』でミリアリア、サイ、トール、フレイといった学友キャラが出てこないようなものである。いなくても一応成立はするが、彼らがいないとキラという人物の生活感がなくなってしまう。

まとめ

 新作RPG自体を久しぶりにプレイしたがさすがの任天堂感で、健全さがすごい。もう声優がしゃべるだけのオタク向けRPG(いわゆるJRPG)はやる気がしない。
 初の完全オープンワールドということで、技術的に決して「名作」と呼べるほどの完成度ではないが、ポケモンだけに今後の「進化」に期待したいところ。おそらく次ハードになるであろう次回作に期待。実際ある程度ゲーム慣れした人向けだし、ポリコレ全開の性的魅力のないキャラクターたちに対しても覚悟は必要で、万人向けとは言えない。
 無料体験版はなく、触ってみないとなかなか理解が難しいところはあろうが、幸いユーザーは多いのでプレイ動画は腐るほどあるだろうし、友達・知り合いのものを触らせてもらうのがてっとりばやい。
 はたしてこの歳でイチからポケモン本編になじめるかという不安はあったが、杞憂だった。やり込み・対戦はあまりしなそうだが、ようやく私もポケモントレーナーデビューができた。これまでツッコミを入れてきた異常者、狂人の世界の仲間入りを果たしたのである。メインの目的は果たせたので及第点はあげたいが、「布教」するほどの名作ではなかった。