うたうポリゴン

魔王K++(ケープラ)のポータル兼個人ブログ

ANGEL WHISPERは90年代の風を感じる良作ノベルゲー【追記】『人形の傷跡』

本編

 Switchで最近出たリメイク作品ANGEL WHISPERを買ってクリアした。ゲーム概要とあらすじは公式サイトよりわかりやすいこちらを参照。一言で言えばSFミステリ。
www.4gamer.net
 以前記事を書いたこの作品と同じ制作なので、テキストはまず間違いないだろうという信頼があった(実際そこは不満なし)。物語に引き込む音楽も相変わらず秀逸。余談だが本作の主人公の名前「由島(ゆうしま)」は、『千里の棋譜』では架空の地名として登場する。
maoukpp.hatenablog.jp
 1998年という時代設定はこのゲームのオリジナルが元々そのあたりの時期に作られたからだが(世紀末のノストラダムス、人類滅亡説を題材にしている)、今となってはそれが懐かしい味がしてすごくいい。どちらかと言えば、この時代を知っている中年向け。話のテーマが現代でもそのまま通用するところがすごい。
 システム周りで『千里の棋譜』との違いは、マップ移動と選択肢連打のアドベンチャー要素が強いのでゲーム感は強め。ヒント機能があるので詰まることはないが、PCゲームの名残でやたらとキーボード入力が多い(ひらがな、カタカナ、英字で判定されるので要注意)。正直面倒なだけでこの辺は微妙。入力ワードも難しかったりするが、どうしてもの時は公式サイトにヒントもとい解答も載っている。
 アドベンチャーではあるが、シナリオ分岐は一切なし(バッドエンドもない)のノベルゲーと言っていい造り。声は一切なしだが気にならない。声優がしゃべるPVで勘違いをしないように(厳密には現代編エピローグで一部声あり)。
 操作性で一番の問題点が、ひとシーン終わってマップ画面に戻る時のロード時間。これが3秒から5秒くらいあり気になる。音楽も途切れるので、長い時はフリーズしたのかと思ってしまうし、単純にテンポが悪く没入感をそぐ。もう少しなんとかならなかったのか。慣れるしかない。マップ画面のカーソル選択が上下キーしかできないのも変だが、これはタッチパネルで直タッチするようにすれば慣れた。
 杉下右京的に細かいことを言うと、主人公の部屋(の背景画像)は4:3のディスプレイとテレビがありちゃんと90年代なのだが、その他の部屋やPC操作画面が明らかにおかしい。薄型のワイドテレビやMacBookiMacらしきマシンが映り込んでおり、「この時代にそんなのねえだろ」ってなる。ちなみにこれは現代編エピローグでも使い回しで、逆に現代だけなら問題なかったのだが。
 話の筋は悲劇的で、好き嫌いだけで言えば正直好みではないがさすがのクオリティ。主人公たち5人のチーム「スパイラル・ゲームズ」のゲーム開発者としての活躍がもっと見たかったなあ。それだけ冒頭のつかみはバッチリなのだった。

 キャラデザはイマドキになっており、皆魅力的。以下、女性キャラの寸評。
 受付の小清水ちゃん、主人公が新しい職場で出会う「受付のオネーチャン」という職種自体が時代を感じる。最初はモブ的なキャラかと思ったら実はかなりメイン格でした。外注スタッフとも仲良くしてくれる気さくさが魅力で、可愛い。攻略したい。
 ライターの奈々ちゃん、主人公の大学時代からの友人。ゲームでは本筋と言ってもいいオカルト情報担当。俺でメインヒロインの練習しろというか、普通の話ならこの子がメインヒロインな雰囲気。「友達から恋人へ」な王道展開を期待させる。攻略したい。
 サウンド担当の百合ちゃん、主人公のチームメンバー。コナンの灰原的というか、虚無・不思議キャラで初対面から意味深なことを言ってくる典型的なサブヒロイン。彼女が作ったテイでBGMが流れる演出もいい。ヴィジュアルが一番タイプ。攻略したい。
 看護師の高見沢ちゃん。なぜか医師でなく看護師の彼女がゲームでは医療情報担当。脇役と言えば脇役なのだが、存在感は強い。誠実な仕事ぶりにも好感が持てる。攻略したい。入院したい。
 主人公の彼女、咲子はイマイチ影が薄い。ゲームに限らずフィクションで主人公が最初から恋人持ちの場合、不遇になりがち。浮気しまくりのヤリチンに覚醒する主人公が見たかったが、残念ながらそういう展開はない。現代編エピローグやPVに出てくる娘は母親である彼女に似ているそうだ。現代で親子同時に攻略……変態プレイか。

 ボリュームは10h行かないくらいで、話も1本のみ(本編クリア後に現代編エピローグが解放されるが短い)。ギャラリーや回想といったおまけ要素は一切なし。発売直後になぜかセールをやっていたが、定価でも1500円なのでとてもお手軽。秋の夜長にどうぞ。

【追記】『人形の傷跡』

 セール中だったので余勢を駆って、『人形の傷跡』もプレイした。これでChild-Dreamノベルゲー三部作(現在手に入るもの、私が勝手にそう呼んでいるだけ)完結。この作品は現代かつ、人が死ぬタイプのミステリである。
 システム周りはANGEL WHISPERとほぼ同じでマップ画面の移動があるが、こちらはロード時間は気にならない。選択肢はあるがそこまで多くなくADV要素は強くない。ホラーな作風なので、選択肢を間違えると容赦なく殺される→やり直しというプレイスタイル。本編5hいかない程度、映画一本で収まりそうな尺。クリア後に4+1の「ザッピング」編が解放されるが短い。
 こちらもオリジナルは90年代なのだが、題材がうーんちょっと古いというか、今となっては手垢にまみれてるな……という印象。叙述トリック的展開もすぐ予想がついてしまった。私は元々ホラー作品を楽しむ趣味はない(怖がらせようとする演出の度に笑ってしまうタイプ)が、正直たいして怖くもないのでホラー好き向けでもないだろう。登場人物に愛着や思い入れができる前にいきなり死んだり話そのものが終わるので、「間」の大切さを改めて知る。ホラー的にも、初対面同然の人間が死んでも怖さがない。
 Switch Liteでプレイしたこともあるだろうが、文字が小さい(フォントも白枠に黒字で見づらいか)せいで読みづらい。眼が辛い。短く終わる作品でよかったと言える。
 3作レビューをやってきてなかなか操作性が満点にならないが、「読ませる」テキストの実力はたいしたもの。Child-Dream先生の次回作にご期待ください。