うたうポリゴン

魔王K++(ケープラ)のポータル兼個人ブログ

市場・企業に甘やかされるアラフォー世代、その「特権」

 ファミマのブランド「お母さん食堂」への女子高生たちの反対運動がネットでは一部話題になっている。別にこの運動に賛同する気はないが、言いたいことはわかる。
 まず一発屋芸人のような世代間知名度に偏りがあるコンテンツだということ。そして、ふざけた女装ネタキャラ(ママという変化球ではあるが)が今の時代、ジェンダー的にもアウトということ(もし「男のママ」を真剣に推すのならガチの女性になりたい男性を使うべき)。二重の意味でスベっており、三流マーケティングと言うほかない。

 そんな中、こんな意見を読んでモヤモヤしてしまった。

(我々)アラフォー向けマーケティングだから、若い世代にウケなくてもOK
香取慎吾慎吾ママ)が好きだからOK

 ちなみにこの件は、鬼滅マーケティングが気に入らない場合のように「嫌なら買うな」の次元の話ではないし、そのための抗議運動という前提がないと話にならないが、本題ではないので深入りしない。
 なかなか身勝手な意見だなあという感想と同時に、はっとした。そうだ、私もアラフォー世代だった、と。たまたま刺さらないコンテンツかつ思想的にダメすぎるネタだっただけで、ターゲット層には含まれていた。もし、自分の好きだったコンテンツだったら…。

 我々、アラフォーって相当マーケティングに甘やかされてるんじゃないか。圧倒的マジョリティじゃないか。ちょうど年も改まったことで、年齢に対する意識が強かった。認めたくはないが、私はまごうことなきオッサンである。
おっさんホイホイ」という言葉がある。特にネットはおっさん天国、アラフォー世代はマジョリティだ。以下の記事は2008年当時作成のようだが、面白いことに2021年の今となっては2008年のコンテンツもかなりおっさんホイホイに近い。一つの定義として「15年」という目安が書かれている。
dic.nicovideo.jp
 中高生だった子供も15年経って30過ぎると金を持つ購買層であり、アラフォーになると車や家といった高額商品も買う、まさに全企業にとっての「お得意様」だ。マーケティングの中でもドル箱であり、会社社会でもメインプレーヤーで、一番勢いがある。前述の三流マーケティングも、会議室で盛り上がって決めてしまったのは主にアラフォー世代だろう。
 これは一種の「特権」なのではないか。全人口比の数的マジョリティではないが、市場の中では支配的階級としてのマジョリティだ。テレビ番組だって、主婦狙いにしてもアラフォー世代をメインターゲットに作られている。

 これは反差別でよく出てくる「特権」概念につながる。男性特権、民族的マジョリティ特権など。
 批判は以下の記事に詳しいが、曰く、【特権を指摘された人のなかでも真面目であったり気が弱かったりする人は罪悪感を抱いて、実際に反省や譲歩を行うが、大半の人はムッとなってしまい、相手の側に対する反感をむしろ強めてしまうもの】。
davitrice.hatenadiary.jp
 特権とは本来江戸時代以前の身分制度や、現在では「議員特権」のようなものだ。一握りの人間が、一般人よりすごくオイシイ思いができることを言う。なのでこの概念は、ワードのチョイスをしくじっている(「優越」くらいにしておけばよかった)。1000万以上存在する個体に対し、特権などは存在しない。
 シス女性特権、健常者特権、大卒特権、イケメン・美人特権、運動できる特権、弱者・反差別特権など特権を言い出したらキリがないし、特権論法はあらゆる属性の人間にネイティブ差別者のレッテルを貼るためのものだ。悪質な言いがかりといっていい。
 したがって、「お前らアラフォーはただ存在するだけで、無自覚・無意識でも他世代への加害者だ、悔い改めろ、懺悔しろ」などと人に言うのはダメだ(言われたらぶん殴る)。しかし、そういう意識は持っておきたい。アラフォーは、調子に乗りやすい。
「特権」について言及するとしたら、自虐的・内省的に触れる程度が正しいのだ。だからこの記事は、当事者としてタイトルにあえて「特権」をつけた。一方「特権棒」で他者を殴り断罪することは無意味であり、人として恥ずべき行為だ。普通に「調子に乗るな」と言えばいい。

 まとめとしては、気がついたら集団の中で権力を持っていたとか、マジョリティになっていたということは人生ままあるので、気をつけよう。でも反差別の文脈での「特権」概念=特権理論はクソなのでみんなの力で殲滅しよう。