うたうポリゴン

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社会運動っぽい趣味、当事者研究の危うさ

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 以前、バズりもせず反感だけを買ったツイがあった。これを掘り下げてみたい。


 さて、前置きとして社会運動の危うさから。以前の記事「弱者の槍、被害者の剣」でも少し触れたが、薬害エイズの件についてはこちらの小山さんのツリーが詳しい。
https://twitter.com/akihiro_koyama/status/1235156249714409472

 薬害エイズの件だけでなく、社会運動運営から有名になる人は多い。いつの間にか社会問題評論家のようなポジションに収まっている人は、ままいる。もちろん、運動には明確な目標がある。一定の成果を得たところで潔く撤退・解散できるかどうかが問題で、運動自体は肯定されるべきものだ。

 一方で最近、当事者研究(当事者運動とも言う)が流行りである。政策・法制度的に社会を変えようという運動よりはハードルは低く、小規模だが人は集めやすい・参加しやすい。趣味だから、「気持ちいい」からやる。グループ交流、オフ会の延長で始める。
当事者研究 - Wikipedia
 きっかけはそれでもいいのだが、危うさは当事者研究も同じではないのか。単なるオフ会ではなく、当事者研究という箔付けが。これが大学サークルなら、4年で自然消滅または代替わりするから問題ない。一方社会人サークルには時限装置がなく、社会運動系はそこが危うい。
 当事者研究には「医学的・科学的な専門家でなくても、好き勝手やれる」という危うさがある。あくまで「当事者たちが語り合うことがメイン」であり、主催者が絶対的リーダーではなくファシリテーターだという。この免罪符が、危険なのだ。

 そもそも当事者研究のゴールはなんだろう。代表者がメディア寄稿、『現代思想』などのインテリ向け雑誌に論文(のようなもの)を発表したり有名になっていき、「先生」化する。そこが「アガリ」になっていないだろうか。
 もちろん、有名になったからといって参加メンバーを見捨てたりはせず、信用のための活動実績になるから会は続けるだろう。だが、その目的は

  • 数年やっていれば既成事実、「専門分野」になる
  • 学者ではないが「現場を知っている」が武器になり、発信力がつく
  • 参加者たち・界隈からは尊敬される

 これは『電車男』のケースと似ていて、掲示板上の協力者・参加者たちは一銭ももらえず、出版化・映像化などした時、作者一人だけが富を持っていった。
 うちゅうリブ(以下「UL」)の一件(前回記事参照)で、私は当事者研究そのものに対して大いに疑念を持つようになった。自覚がなくても、この危うさは常につきまとう。別に野心があるのはいいし、結果的に有名になるのは悪いことではない。だが、最初からそれを狙ってやるのは論外である。

 学者や評論家になれなかったインテリの個人的野望を、当事者研究で果たそうとしていないだろうか。「ネットで書いてるだけ」という劣等感は、リアルに乗り出すことによって克服できる。その気持ちよさに酔ってほしくない。
 少なくともあのUL代表には、志を全く感じなかった。専門知識・活動実績から遠く及ばないメンズリブ先行者をライバルのようにみなし、同格の「仲間」のつもりでいる。おめでたいと言うほかない。

 ULの悪口が本稿の主題ではない。こういう例は、あちこちに転がっているのではないか、ということが言いたかった(実際前回記事に対し、そういう反応もあった)。「オフ会」と「研究」の境界はどこにあるのか。自由参加とはいえどうせ二次会があるなら、一体どっちが本編なのだろうか。会議室か、お店か。酒を飲むか飲まないか、くらいの違いしかない。テーマが設定されているか、は別にお店でも可能だ。
 2hの会を年10回やったとして、実働時間は20hである。そんな短時間で「現場経験」としてしまっていいのだろうか。会議室での開催は、単に「真面目にやっている」というステータスになっていないだろうか。実はこれ、参加者にもメリットがあって「飲み・遊びに行っているのではない」という大義名分が得られる。つまり共犯関係にある。
 
 そんなモヤモヤと不信は、たぶんこの先ずっと消えないんだろう。この手の会に今後関わりたいとは思わないし、絶望だけが残った。自分で何かやろうというという気力も、もはやない。
 まとめると、メサコン(メサイアコンプレックス)と虚栄心の問題は、互助会や当事者研究といった会を運営する以上、逃れられない。運営者各意は、しっかりと決意と覚悟を持ってやってほしい。閉じた界隈のツイキャスで馴れ合っている場合じゃないよ。

 興味深いまとめ・記事があったので追記。ブームに乗って粗製乱造される当事者研究の中、トラブルも多発し、おそらくこれから批判やバックラッシュが始まると思う。別にそんな運動はやらないけど。残念ながら現場は、下記に載ってるような人たちばかりではない。
togetter.comtogetter.com
【4/2追記】杉田俊介さんも「(当事者研究の簒奪、フリーライド)危うさを引き受けながらの試行錯誤」と言っている。まくねがおさんとの対談の連載一覧はこちらで、おすすめ。
wezz-y.com