うたうポリゴン

魔王K++(ケープラ)のポータル兼個人ブログ

2006-2024ドラえもん映画一気レビュー

 分割しても読みづらいので、9000字超えと長いが一気にやります。
maoukpp.hatenablog.jp
 この記事(概論と『新・鉄人兵団』)の続き。第2期ドラ映画は全て、2019年以降に観た。

のび太の恐竜2006(2006年)

ドラ映画らしさ:S 子供向け:A 大人向け:A+
(オリジナルとしても)一番古い作品を偶然最後に観た。第2期初なので声優の演技もまだ固まっていない。絵柄もちょい古いというか旧シリーズ(第1期)と現シリーズ(第2期)の中間な感じ。
 改めて『恐竜』はドラ映画のルーツであるなあと。ピー助は「可愛い動物枠」ゲストキャラの原初だし、ひみつ道具の制約の中で頑張るという展開(タケコプターで白亜紀アメリカ→日本まで移動)も、冒険途中でスネ夫が悲観的・現実論を言う→最終的には和解し改めて決意を固めるというくだりも、悪党との対決も。そしてタイム・パトロールの存在もタイムマシンを使う話には欠かせない。さらに「冒険中は無断外泊→タイムマシンで家を出た日に戻ればいい」というご都合主義ながらも重要な制約回避方法も。
 ストーリー展開に派手さはなく、今となっては映像も地味め。男性であれば「子供の時は恐竜が好きだったなあ」という懐かしさがあり、やや大人向け。
 ゲストキャラはピー助のみという潔さ。リメイクでのアレンジが少ないのも、完成度の高さゆえだろう。恐竜と出会い、育てる。大自然での冒険そして別れというストーリーはシンプルながら見事。この作品は恐竜がメインであり、悪党(恐竜ハンターとそのスポンサー)との直接対決が弱いところがやや物足りないが、構成上やむを得ないだろう。
 元の世界に戻った後のエピローグ部分が一言だけで終わるキレ味も心地いい。第1期映画シリーズが20年以上続くことになった、原初の作品としての偉大さはさすが。

のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜(2007年)

ドラ映画らしさ:B 子供向け:B+ 大人向け:B
 ファンタジー世界のドラえもん。「もしもボックス」で魔法がある世界だったら、という土台部分にあまりドラえもんらしさがない(しずか、ジャイアンスネ夫は魔法世界の人間でゲストキャラのようなもの)が、話の展開自体は王道だし子供は楽しいかもしれない。特に悪党の強力さ、恐ろしさが際立つ。
 リメイクによるアレンジは『新・鉄人兵団』と同様(監督が同じ)お見事。パラレルワールドと元の世界はつながっているという設定になっている。
 話の都合上、中盤で「逃亡ルート」があるのだがそれを選択しないで戦う道を選ぶ。ストーリーがやや破綻気味だが、もしもボックス自体が飛び道具みたいなもので、構造的にやむを得なかったか。パラレルワールドの設定は、メタ的に逃亡ルート抑止にもなっている。

のび太と緑の巨人伝(2008年)

ドラ映画らしさ:C 子供向け:D 大人向け:C
 まず序盤キー坊と出会い「弟ができた」のび太が、精神的に成長してしまっていて違和感。こんなののび太じゃない。このキー坊、「キー」しか喋らず常に勝手な行動を取るためイラっとする。子供のリアルさを出したかったのか、キャストに声優ではない子役を使っているのも浮いていて違和感。
 中盤からの冒険劇は一見王道のようだが、違和感があちこちにある。ひみつ道具がほぼ使えない制約も、ドラ映画らしさを弱めている。この映画の評価は「キー坊可愛い」で全てが許せるか、否か。だから子供向けのようで違う。子供自身は、あざとい子供キャラは嫌いである。これは子育て経験があり、可愛いもの好きの若いママさん向けだ。
 もう一つの問題点は、長老ジィ無双。キー坊が喋らない上、ひみつ道具も使えない弊害が出ている。ストーリーを進めるための説明役であり、導き役で、戦闘も強い。「お前一人で頑張れよ」と言いたくなる。ドラえもんたちは今回彼に操られてるだけ、傀儡のような印象さえ受ける。ドラ映画に限らず劇場版というのはゲストキャラ・世界観との接続が大事で、「外野感・蚊帳の外感」が出てしまってはダメ。こんな素人の二次創作みたいなダメ出しをさせないでほしい。
 王女リーレの成長物語と見れなくもないし、彼女をメインにすればよかったのでは? ゲストキャラの配置・構成に大いに問題がある作品となってしまった。

新・のび太の宇宙開拓史(2009年)

ドラ映画らしさ:B+ 子供向け:A 大人向け:B
「宇宙遠征物」の代表作と言っていいだろう。偶然のび太の部屋の畳の下と遠い宇宙が繋がってしまうという巻き込まれ展開(どこでもドアには地図情報が必要かつ距離的な限界があり、行き来することはできない)。
 コーヤコーヤ星という異星での冒険物。オリジナルの動物がいたり、完全に地球とは違う環境。そのため偶然できたゲートが消える=別れも永遠的で感動する。
 地球人なら誰でもスーパーマンの環境で、さらに射撃の腕もあるためのび太は大活躍する。オリジナルは1981年だが、異世界転生ものの原点が既にここにある。5人での冒険は実質終盤だけで友情・チームプレイ要素は弱いのでドラ映画らしさはB+とした。話の構造的にコーヤコーヤ星に行ったり来たりするため、やや緊張感に欠けるがエンタメ・ヒーロー映画として王道の展開。ゲストキャラ、悪役のキャラの存在感も申し分なし。

のび太の人魚大海戦(2010年)

ドラ映画らしさ:S 子供向け:A 大人向け:B
 これぞ王道! メジャーな『恐竜』以外旧作で何から見ていいかわからない人にオススメしたい。夏に観たい映画。
 冒頭の「架空水」で無邪気に遊ぶくだりから、海底勢力に巻き込まれていく展開。しずかがさらわれて助けるのもまさに少年漫画的王道。ドラミが武闘派なのも見どころである(そもそも一緒に行動することが珍しく、普段はドラえもんが困った時のサポート役が多い)。不満は悪党キャラが弱いくらい。ゲストキャラとの出会いや別れも王道! とはいえ感動要素は薄いので、大人向けはBとした。
 挿入歌『遠い海から来たあなた』が武田鉄矢というのも、旧シリーズ(第1期)世代にはポイントが高い。

新・のび太と鉄人兵団(2011年)

ドラ映画らしさ:B 子供向け:S 大人向け:S
 冒頭の、前回ドラ映画記事を参照。

のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜(2012年)

ドラ映画らしさ:A 子供向け:B 大人向け:A
 カブトムシがテーマとなっており、男の子向けエピソード。子供の頃ののび太の父・のび助が実質的にゲストキャラ。声優はなんと「でえベテラン」こと野沢雅子さん。声だけ聞くと異常に強そうだが別にそんなことはなく、普通の少年である。
 冒頭の日常シーンでのび助がのび太に言う「ママやドラえもんに頼ってばかりではいけない」という台詞から、異世界での冒険も最終決戦ではひみつ道具がほぼ使えず「物理で頑張る」というストーリー展開。全体としてはやや地味で、親子愛が全体のテーマとなっているので大人向け。最終決戦前にジャイアン「男ならやらなきゃいけない時がある」しずか「女の子もよ」と返すシーンがあり、ジェンダー的になかなか素晴らしい。
 挿入歌『キミのひかり』は堀江美都子さん、これも旧シリーズ(第1期)世代には好印象。

のび太のひみつ道具博物館ミュージアム)(2013年)

ドラ映画らしさ:A 子供向け:S 大人向け:A
 この映画は『新・鉄人兵団』と監督が同じで、対になる作品である。実は見た直後よりも、尻上がりに評価を上げた変わりもの。たしかにパンチは弱いし、冒険にも感動にも派手さがない。
 ドラえもんの鈴が盗まれてしまい、それを探すというのが話のきっかけ(いつものタイトル表示前が「ドラえも〜ん!」ではなく「のび太く〜ん!」で始まるのが象徴的)。話のスケールは小さく、冒険要素はなくミュージアム内で完結する。とはいえ探偵もの、怪盗を追っていく&バトルという話の流れはコナンのようで子供向け要素は完璧。大人は酒飲みながら気楽に見れる。
「悪党が一人も出てこない」というのが特徴的。実に平和な作品世界であり、小さい子供でもストレスなしで見れる。また未来世界の日常的風景もレアであり、ファンには面白い。
 表面的には異色作のようだが、「鈴」をキーにドラえもんのび太の友情が主題となっており、きわめてドラえもん映画らしい。実質的な主人公はドラえもんと言える。一見テレビスペシャルっぽい造りの変化球を、劇場版としてやれた勇気を評価したい(実際に、2019年の誕生日スペシャル『未来の迷宮(ラビリンス)おかし城(キャッスル)』ではドラミの手配で22世紀の施設に遊びにいくという冒頭部が同じだったりする)。
 ラストの巨大警備ロボと戦うくだりはとってつけた感が強いが、許容範囲の演出。終盤のび太が推理をした時に、ドラえもんが「君はじつにバカだな」「バカだねえ。じつにバカだね」と原作台詞通りのツッコミを入れる小ネタはファン必見。また、千秋(ドラミ)による挿入歌『笑顔はひみつ道具』もポイント高い。
 最後に、まだ出会ったばかりの頃の回想シーン、ドラえもんの台詞。

のび太くんは勉強もダメ、運動もダメ。根性もなくて、どうしようもないやつだけど…。
でも、キミは…
でもキミは、いいやつだな
#ドラえもん名言 #のび太のひみつ道具博物館

新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜(2014年)

ドラ映画らしさ:B 子供向け:C 大人向け:C
 リメイク作品なので名作のはずなのだが、正直それほどの価値を感じない。アレンジも抑えめなので余計にそう思ってしまう。つまり「アレンジすべきリメイク作品で守りに入ってしまった」作品。
 アフリカにあるバウワンコ王国という秘境が舞台なのだがそこに到達するまで(アマゾン探検)が長く、前半と後半の話に連続性がなく王国部分がどうにも印象に残らない。オリジナルキャラクターを追加するか、小栗旬演じるサベール隊長などのキャラをもっと掘り下げればよかったのでは…。
 メインのゲストキャラと「可愛い動物枠」がペコ一人で兼ねているところに無理があり、話の展開もご都合主義が過ぎるというか強引。ペコは後半の王国到達あたりで正体を語るのだが、突然二足歩行しだし、喋り出すシーンは違和感しかない(記憶がないなど、何かの制約でそうだったわけでもない)。王国やその登場人物(ペコ以外)を前半の冒険にもからめればいい作品にできたと思うが、残念。

のび太の宇宙英雄記(スペース・ヒーローズ)(2015年)

ドラ映画らしさ:C 子供向け:B 大人向け:C
「宇宙」というわりに宇宙での戦闘シーンが全くなかったなあ…。軽いノリが続きテレビっぽいため、ドラ映画らしさは弱い。2日目の夜にスネ夫が地球に帰ろうと言い出す→やっぱり戦うのくだりくらいで、対立・喧嘩の乗り越えや仲間たちやゲストキャラとの友情も薄い。
 構成もあまりよくなくて、まず最初の日常パートが長すぎる。ポックル星で活動してから悪党たちの企み(の動機)が判明するのが遅いし、終盤は急展開すぎる。悪党3人衆はキャラが立っていて中盤まではよかったが、やられ方があっけない。もう少しバトルを少年漫画的に盛り上げて欲しかった。特にボスがしょぼすぎて興ざめする。ラストの「チート技で解決!」という展開も大人にはキツい。
 ゲストキャラが弱すぎる。バーガー監督にいたってはドラえもんの道具であり、出会いがあるのはアロンだけ。アロンに見せ場がほぼなく、全く印象に残らない。
 wikipediaを見る限り漫画版の展開の方が面白そうで、なぜこちらを採用しなかった? 子供向けに作りすぎてしまった…残念。

新・のび太の日本誕生(2016年)

ドラ映画らしさ:A 子供向け:A 大人向け:A
 5人揃った大きな「家出」(ハムスターを預かることでドラえもんまで家出するくだりが笑える)をきっかけに、原始時代の日本での冒険。交流のある原始人のゲストキャラが一人だけでやや寂しいが、増やす必要性もなくやむを得ないか。ともかくリメイク作品としてのアレンジは抑え目。今回の「可愛い動物枠」は、のび太が作ったペットたちでどこか『恐竜』の雰囲気も。
 異色なのは今回のび太ではなくドラえもんが主役であり、悪党とも一騎打ちで戦う。原始人にもわかりやすいよう「精霊王ドラゾンビ」というコスプレをする。悪党のギガゾンビ(とその配下)はかなりいい味出していて、個人的に今まで見た中で一番好きな悪役。

のび太の南極カチコチ大冒険(2017年)

ドラ映画らしさ:A 子供向け:B 大人向け:B+
 これも夏に観たい映画。冒頭氷山で遊園地を作って遊ぶのだが、ここがすぐ粉々に崩壊する。『こち亀』の調子に乗る→破滅シーンのようなシュールさがあり・普通の映画のラストシーンのようでもあり妙に笑ってしまう。氷山→南極という流れもスムーズ。南極にあるヒョーガヒョーガ星古代文明遺跡が舞台で、現代ヒョーガヒョーガ星人がゲストキャラ。
 ゲストキャラ、悪党(遺跡の防衛システムであり悪人ではない)が物足りない。見せ場も偽ドラえもんと戦う(のび太が正体を見抜く)シーンくらいだが、全体的にはそつなくまとまっている優等生。全体的に尺がキツキツでやや大人向けだが、構成自体は悪くない。

のび太の宝島(2018年)

ドラ映画らしさ:D 子供向け:C 大人向け:E
 全編あざといだけで、ドラえもんである必要性がなかった。あざとさと商業力だけはSランクである。「仕事でやっつけました」感が強く、ドラえもん愛が全く感じられない。
 ひみつ道具出しまくり(+ミニドラ)で派手にしているのは焼畑農業で、こんなの毎年やったら飽きるし自分の作品しか考えてない愚行。たとえば20年ぶりだった『シティーハンター』の映画だったらこの作りでもいいが、言うまでもなくドラ映画は毎年やってるのである。
 全般ノリが軽すぎて緊迫感がない、完全にテレビ。それ以外は安易にドラえもんの定番要素を詰め込んだだけで「置きに行った」感がひどいが、でもこれが興行的にはヒットしてしまった。ドラ映画でイラっとしたのはこれが初めて。イマドキ映画に汚染されてしまった感が強い。
 ドラ映画のゲストキャラには「可愛い動物枠」がいるが、今回は「クイズ」という鳥ロボット。この鳥が終始ナゾナゾでストーリー進行の腰を折るのがイラっとする。「子供はナゾナゾが好きなんでしょ?」という安易さ。ドラえもんへの「狸いじり」もしつこくて胸焼けする。
 画面上は見えない(どこでもドア越し)が、しずかの風呂のぞきも2018年の劇場版でやってほしくなかった。
 スターウォーズ(親子対決)、ジブリ(女の子が新生活をする)、ガンダム逆襲のシャア』などあらゆるジャンルをパクりツギハギだらけで薄っぺらい話なのだが、ただ「巧い」。ラストはゲストキャラの親子がプログラミング対決をし出すが、これはハリウッド映画のパクリかな? 本当にドラ映画の意味がない、同人や投稿サイトでやってくれ。
 作品には人格が出る。この脚本家(敏腕プロデューサーでもあるらしい)が本当に生理的に嫌い。無理。ネガキャンみたいになってしまうが2020年映画『新恐竜』もこの監督・脚本コンビが担当するらしく、あまり期待はできない。
 星野源のED主題歌もいかにも商業的。単発の映画ならまだしも、なんと10月から土曜夕方への改編でテレビOPになり、すなわち来年(以降)の劇場版のOPにもなることに。。スネ夫のように悲観的なことを言うが、どうもこの映画(関連の人物)の影響力や「政治」を感じ、今後のシリーズが不安になる。
【追記】まとめました。
togetter.com

のび太の月面探査記(2019年)

ドラ映画らしさ:S 子供向け:A+ 大人向け:A+
 劇場で一度観ただけだったが、円盤が出たので買い、改めて鑑賞。やはり、歴代の中でも評価は高い。初挑戦となる脚本家が優秀かつドラえもん愛に溢れている。『宝島』と何もかも対照的。
 ゲストキャラが「転校生」として登場するため、劇場版では珍しく学校の中の描写が多い。月で最初は遊んでいるだけ(道具でウサギ王国開拓)だが、そこからガチの月面コロニー発見→カグヤ星へという展開もスムーズ。「遊び」だったはずのウサギ王国とのつながり方、そして地球征服を企む悪党もキャラが立っていて良い。小ネタとしては巨大ハンマーで自害しようとするドラえもんの迷セリフ「壊れてお詫び申し上げます!」が見どころ。
 レギュラーキャラの見せ場というか持ち味もしっかり出ている。『新・鉄人兵団』のピッポ同様、歌うキャラ登場→ジャイアンがリスペクトのくだりは新しいテンプレとなるか。
「無駄に恋愛・ラブコメ要素がないのがドラえもん映画の良さ」と前回の概論で書いたが、今回スネ夫がルナ(広瀬アリス)に恋をするところは少年らしさが出ていて良い(もちろん毎回だと鬱陶しいし、主役ののび太でないところがいい)。最後のゲストキャラとの「別れ」も感動的だし、文句の付け所が全くない。私にとっては『新・鉄人兵団』だったが、この映画はドラ映画にハマるきっかけになり得る。現時点で最新だし、万人にとりあえず見てほしい映画。

のび太の新恐竜(2020年)

ドラ映画らしさ:E 子供向け:C 大人向け:F
 以下参照。
maoukpp.hatenablog.jp

のび太の宇宙小戦争 2021(2022年)【2022.5追記】

ドラ映画らしさ:A 子供向け:A 大人向け:A+
 劇場で一度見ただけだが、追記。
 タイトルがややこしいが、公開延期になった都合で2022年である。Amazonプライムで旧作全てが公開されていたおかげで比較できたが、リメイク具合が秀逸。F先生の世界観を壊すことなく、足りないところを補っている(歴代のリメイク全てに言えることだが)。今回で言うと、導入部(日常)の冗長な部分をカットし、その分パピやピリカ星のキャラたちがしっかり描かれている。姉を追加したことでパピというキャラクターの少年らしさや家族愛が描かれ、より深みが出ている。敵・悪党ではあるがドラコルルはまともな軍人に改変されており、ギルモアとの対比が引き立っている。
 そしてドラ映画ファンにはおなじみの『少年記』から引き継がれた挿入歌、ビリーバンバン『ココロありがとう』が素晴らしい。そもそも「戦争映画を撮ろうぜ」という導入部がイマドキの小学生からは現実味がないものになってしまっているし、もろもろ子供よりは大人向けの作品。
 不満点は、スネ夫が実際の戦争におびえるくだりが少ししつこい(逆にしずかがメンタル強すぎ)ところだが、総じてリメイク作品として名作と言える。くしくもウクライナ戦争中の公開となり、独裁者ギルモアという悪党がとてもタイムリー。

のび太と空の理想郷(ユートピア)(2023年)【2023.11追記】

ドラ映画らしさ:A 子供向け:A 大人向け:B
 脚本が古沢良太ということで全く期待してなかったが、杞憂だった。どうやら川村元気のトラウマが大きすぎたようで。。
 導入部(日常)、学校から野球のシーン、0点のテスト返却という流れが見やすいというか定番だがよくできている。のび太の前にゲストキャラが現れる巻き込まれ型ではなく、今回はいつもの5人組の自発的な冒険の末、三賢人が支配するハイテク空中都市にたどり着く。露骨に怪しいカルトであり、「ユートピアなんかいらない」という反逆型のストーリーになると容易に想像がつく。ダメ人間・のび太にはマインドコントロールが効きにくいという展開にらしさが出ている(ドラえもんもロボットなので効果なし)。
 一度は洗脳されたジャイアンスネ夫、しずかたちも立ち直る、全て想定内の展開だが子供向け映画としては悪くない。のび太ドラえもんの絆、ゲストキャラの猫型ロボットがメインの話。感動要素は薄いが、気楽に見れる良作。
 欠点は悪役、黒幕キャラの出番が少なすぎて物足りないくらいで、ラスト、日常に戻ったあとのオチも決まっている。

のび太の地球交響楽(2024年)【2024.4追記】

ドラ映画らしさ:C 子供向け:A 大人向け:C
「音楽をテーマに」というアイデア先行、「合奏で世界を救う」という展開ありき、そもそも「音楽」にドラえもんらしさがない(「ムードもりあげ楽団」を出したりはしているが)。無難かつ新鮮さで「置きに行った」作品。小学生のリコーダー&音楽の授業という共感の一本槍かつ、演奏シーンは劇場の音響頼みという安易さだけが伝わってくる。脚本家はテレビシリーズを担当していたようだが、良くも悪くもテレビスペシャルの域を出ていない。尺が余っているというか話にたいした中身がないので、40-50分のテレビスペシャルで十分。
 音楽の先生も出てくるが、原作にいるわけでもなくなんだかなあという感じ。話の都合上やむを得ないとはいえ、ドラえもんが冒頭ののび太に「真面目にリコーダー練習しろ」→中盤から皆に初見で演奏できるチートを提供は整合性がない。全体的にドラえもんである必要性が全くない。「クレしん」でも、どんなフォーマットでも子供・学生ものならやれる話。
 シリーズものの劇場版を評価する時、コース料理に当てはめるとやりやすい。音楽というメイン料理をやりたいのはわかる。ただ他が全くダメというか統一感がなく、肝心のメインももっとやりようはあっただろというドラえもん料理だった。ある意味で、劇場版を毎年やらなくてはいけない大変さが伝わってくる。来年に期待。

総評

『新・鉄人兵団』は別格・殿堂入り、双璧をなすのが『恐竜』『月面探査記』。個人的に推したいのが『ひみつ道具博物館』というまとめになる。レンタル屋に行けばどこでも置いてある。ただし一気に見ると飽きるので、多くても週に2本程度がいいだろう。
 家族で見るもよし、恋愛要素がないので非モテにもやさしく、癒されるので人生に疲れたサラリーマンにもオススメである。ドラ映画はオタク層以外にもファンが多く、ネットよりもリアルで役に立つというか老若男女問わず会話のタネにもなる。汎用性の高さこそが、ドラ映画最大の魅力なのである。