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韓国時代劇にハマったので一覧レビューする

 この歳、40を過ぎるまで韓流ドラマに全く興味はなかったのだが、テレ東で平日朝やってる再放送の韓流・韓国時代劇に今年からハマってしまった。なのでドラえもん映画ポケモン映画のように一覧レビューをしていきたい。
韓国の時代劇 - Wikipedia
 歴史的な概要・作品一覧は上記参照(ここでのレビュー作品もすべて一覧にあるので、詳細を知りたい人はぜひ)。さらに国内ドラマにはない特色を以下にまとめる。

概要

歴史ネタ、文化・風習が新鮮

 私がハマったのはこれが大きい。つまり、国内の場合時代劇は戦国か幕末か、だいたい描かれるネタが決まっていてネタバレした上で楽しむ前提。それがないのが楽しい。もちろん、今後はある程度わかってきてそれは薄れていくだろうが。また、韓国時代劇の専門用語や風習、高句麗(コグリョ)、新羅(シルラ)、百済(ペクチェ)といった韓国語読みを学習できるのが楽しい。別に何かに役に立つとかではない。教養とはそういうものだ。
 また、とにかく冤罪→拷問→そのまま死ぬor自白したら処刑、あるいは罪人になったり身分を回復したりというパターンが多いが、これは現代の人権や司法の大切さを教えてくれる(そんな意図はおそらくない)。

役者が全然わからないので新鮮

 これは全ての海外ものに言えることだが、歳を取ってくるとどうしても役者先行で作品を見てしまうもの。この役者なら途中で死ぬな、とか犯人だなとか先が読めてしまう。それを排除でき物語に没入できるのは新鮮で楽しい。ある程度歳を取った人向けなのかもしれない。

熱い、激しい感情

 これは現代ものの韓流ドラマでも共通ではないかと思う。香辛料が効いている。女性が自己主張をしっかりするし、男でも号泣したり、男女問わず罵倒したりとにかく激しい。銀河英雄伝説的な毒舌のノリが好きならハマる可能性がある(逆に最近の日本では石丸伸二や斎藤元彦のようなパワハラ野郎の政治家が出てきてしまって、なんだかなあという気はするが)。2000年代からNHK大河ドラマが女性活躍路線に踏み切ったのも、韓流時代劇の影響もあったのではないか。2000年代に韓流ドラマが流行ったのもわかる気がする。とにかく新鮮だったのだろう。

魅力的かつ自然な声優演技

 洋画、欧米のドラマのように英語を勉強しようという動機もわかないので、私は基本的に吹き替えで見ている(2回目以降は韓国語にすることもあるが)。吹き替え物あるあるだが、声優の力も大きい。声優の名前を知っていればそれだけで親しみがわいたりするのも、オタク向けと言える。そして欧米ものの吹き替えと決定的に違うのは、同じアジア人なので自然なところ。わざとらしい声の芝居や、違和感がないのである。これが没入感を生んでいると思う。

 さて、そんなわけで例のフォーマットで一覧レビューをしていく(視聴順、今後も追加する)が、時代劇それも国外となれば大人向けなのは明白。なので評価軸は史実度、女性向け、男性向けとする。史実度は、どのくらい史実を元にしているか、歴史の勉強になるか。この評価軸は別に作品の面白さとは関係しないが、要は水戸黄門暴れん坊将軍のような1話完結ものエンタメではなければ、史実寄りかファンタジーかで好みがはっきりと分かれるものだ。なので最初にそれを明記したい。イマドキは男性・女性向けという区分けは好ましくないかもしれないが、少女漫画・少年漫画の違いと思ってもらいたい。両方が高ければそれだけ万人向けということだ。

王女ピョンガン 月が浮かぶ川(2021,全20話)

史実度:E 女性向け:B 男性向け:A
 時代は三国時代高句麗の王女が記憶を失って暗殺者として育てられる、という主人公の生い立ち・冒頭の展開が漫画すぎる。ゲームすぎる。だが、それがいい。日本で言ったら、有村架純がチャンバラでめちゃくちゃ強いみたいなキャラである(「ピョンガン無双」というゲームが出てそう)。
 時代も古いし、史実度はかなり怪しいが三国志(正史ベースでない)のようなファンタジーとして楽しむべきものだろう。歴史ものだが登場人物は多すぎず、男女2人ずつのメイン4人を中心に、恋愛ドラマのように見やすい。主役のピョンガン(キム・ソヒョン)はとても可愛いし、ヘ・モヨン(チェ・ユファ)はいい女すぎるし、コ・ゴン様(イ・ジフン)がイケメンすぎる(ダサい、冴えない面もありそこがまた可愛い)。悪役のコ・ウォンピョはトム・ブラウン布川を渋くカッコよくした感じでとてもいい。
 少年漫画的修行シーンがあったり、戦闘シーンはかなり多く男性向け。中盤のクーデターや終盤の新羅との合戦シーンは相当力が入っていて、三国時代を実感でき歴史ものの楽しさもしっかりとある。この作品は終盤からテレビで見たのだが、話の筋はよくわからないがなんとなく引き込まれるものがあった(後追いで円盤で最初から見た)。私が韓国時代劇にハマるきっかけとなった、記念すべき作品。

太宗イ・バンウォン(2021-2022,全32話)

史実度:A 女性向け:D 男性向け:C
 時代は高麗末期から李氏朝鮮へという転換期。KBS大河ドラマという枠で、かなり史実寄り。が、とにかく暗い。主人公の父親である李成桂(イ・ソンゲ)は日本史にも名前は出てくる李氏朝鮮の建国者である。まずここが歴史好きとしては熱い。前半は父親に天下を取らせるために主人公が活躍する。で、天下を取ったは良かったがその後は一族内でゴタゴタし、自分が王になる物語。そこまではまだいいのだが、その後の粛清が見ていられない。前半は二人三脚だった嫁とも不仲になり、バカ息子(長男)を更迭したり「専制国家の王なんてこんなもの」というリアリティだけはすごいが、全く楽しくない。ただ、ためにはなる作品。権力闘争というのは、主人公が成り上がる側であれば見れるが、王になった後はこんなにも醜く映るのかという気付きがあった。
 大河ドラマらしく登場人物が多いのでこちらの相関図がわかりやすい。パンサー管に似ててめちゃ渋いチョ・ヨンム将軍が推しメン。ちなみにこの役者は『王女ピョンガン』では主人公の父親の王として出てくるが、そちらでは冴えないのでさすが役者と感心する。
太宗イ・バンウォン(原題)|番組詳細|韓流No.1 チャンネル-KNTV

太陽を抱く月(2012,全20話)

史実度:F 女性向け:A 男性向け:B
 時代は李氏朝鮮だが「架空の」王の時代、つまり完全な「時代物」フィクション。作風もややファンタジーなので女性向けであり、硬さはなく序盤はラブコメで、その後シリアス展開。主人公周辺は15歳前後、その後一気に8年後となり(主人公は世子(セジャ)→王、ずいぶんと若い王である)成年でキャストが変わるのだが、子役(というには大きいが)たちが皆美少女、イケメンすぎる。キャスト交代後はどうしても見劣りしてしまう(さらに主人公以外は顔も似てないので、しばらくは誰だお前ってなる。吹き替え声優は同じ)のだが、終盤の真相解明で過去の回想での新規シーンが入り、視聴者として「再会」することになり感動する。なので最初の5話くらいでハマれば完走する価値は十分にある。原作が小説でそっちがどうかは知らないが、中盤は間延びするので全12話くらいでちょうどよかった気もする。
 時系列的に、ここで子役時代の2番手女優というか悪役として出ていたキム・ソヒョンが成長し、その後『王女ピョンガン』で主演を張ることになるのだった。知る順番が逆になったが、それもまた味わい深い。だんだんと、各作品の役者もつながってくる。

宮廷女官チャングムの誓い(2003-2004,全54話)

史実度:D 女性向け:A 男性向け:B
 李氏朝鮮の11代国王の時代。前半は女官(この作品では料理がメイン)、後半は医女として活躍するチャングムの物語。前半は美味しんぼ的なノリのグルメもの、後半は医療ドラマという雰囲気で見やすい。一言で言うと「職場いじめドラマ」である。主人公補正でギリギリのところで危機を脱出したり、危機を逆用して活躍したりするがその辺はあくまでドラマ、リアルでチャングム状態になったら詰むのでさっさと辞めよう。
 前半28話で冤罪で流罪にされ、悪が勝利する胸糞展開だが、終盤48話では真相が究明され結果的に復讐達成もされスカッとジャパンとなる(ジャパンではないが)。とはいえ全体的にそこまで暗い作風ではなく、コメディ担当のカン・ドック(チャングムの養父)、ミン尚宮(サングン)がとてもいい雰囲気を出している。
 主人公が女性なので、チャンバラシーンは相手役ミン・ジョンホくらいで控えめ。基本的に宮中で話が進行するが、流刑地である済州島のシーンもある。ここで倭寇が出てくるのが日本人としてはちょっと面白い。今は亡き井上倫宏(ミン・ジョンホ)、富田耕生(後半のミン・ジョンホの上司)の声を堪能できるのも魅力。
 前半で退場するがメインキャストと言っていいチャングムの母親的な指導者・ハン尚宮(サングン)役ヤン・ミギョンは『太陽を抱く月』ではヒロインの母親役だった。そちらでは出番はたいしてないが、やはり似たポジションで起用されるようである。最大の悪役、チェ尚宮(サングン)の悪い顔と怖い声が最高だが、韓国語を聞くと声だけは可愛くてギャップに笑ってしまう。
 話数も多く作中の経過年数もけっこうあるので時系列がよくわからなくなるが、こちらの記事が参考になる。
チャングム年表 Ver0.1 - @もろいことない?
 ただ、どうしてもよくわからない謎が一つある。チャングム流刑地済州島で医者を志す(30話)→脅迫されて倭寇を治療した罪で再度捕まり、済州島から本土へ(31話)→無罪(32話)→医女試験に合格→半年間の修練期間を経て宮中に配属(33-34話)で以後そのままという流れだが、元々の流罪(冤罪の謀反)はどうなったんだ? 31話冒頭で「2年後」とあったのでこの期間で元々の刑期はそこで終わった? そんな短いのはおかしいというか、昔の流刑は終身刑のようなものだと思うのだが……いつの間にかうやむやになっていて司法が杜撰である(48話で冤罪は晴れ、最終回の54話でも身分が回復するので帳尻は合うが、それまでの過程がおかしい)。そういう時代・国家だったという描写なのだろう(たぶん違う)。