うたうポリゴン

魔王K++(ケープラ)のポータル兼個人ブログ

「マスクの問題」は「オタク差別」に置き換えるとわかりやすいかもしれない

「マスク拒否男」が全方位から叩かれているが、私は同情している。そんな中、以下はとても面白い記事だった。
anond.hatelabo.jp

 船長や機長には安全上の理由から、法的に強い権限がある。客を降ろすことそれ自体は違法ではない。だが、権力行使というのはその正当性が問われる。
 今回の権力行使、口論になったところで排除というのは悪徳警官・刑事が職質の名目で粘着的に容疑者にからみ、相手が怒ったら「ハイ、公務執行妨害!」で逮捕というような手口に近く、きわめて危うい。
 私は根が反権力・リベラルな人間なので、このような事件は毎回とても腹が立つ。権力の濫用こそ批判され、正されるべきだ。

 今回のマスク飛行機事件は結局「マイノリティは虐げられる」という点で、上記増田で挙げられていた黒人差別と同じである。「黒人差別に正当性はない」が現代の常識でも「正当性がある」時代もあったし、その現代の常識も闘争の歴史があってこそで、今なおBLM運動で続いている。
 健康上の理由有無に関わらず「マスクが嫌いな人間」は、社会的に排除されるべきなのだろうか。民族・性差別とは違い、単純に「数の少なさ」という意味でのマイノリティではあるが、だからこそ余計に袋叩きになってる感がある。

 マスクをしなければいけないという社会通念は、今あると言えるのか。コロナが流行ってから半年程度だし、来年にはなくなっているかもしれない。マスク拒否男のツイートによれば、座席は隣は空いていたらしい。それでもマスクしないといけないのか。自粛警察や旅行者差別といい、こんなトラブルが起きるのは同調圧力の強い日本だけ。本当に特殊な国で生きていると痛感する。
「マスクをしたくない」がお気持ちなら、「マスクをしない人間からのコロナ感染を不安がる」もまたお気持ち。些細なことでも多数派を占めた方が勝ち、少数派を従わせるという恐ろしい社会になってしまう。

 さて、前置きが長くなったがここから本題。ネットに多い、ありもしない「オタク差別ガー」とか言ってる人間にとっては、この件は「オタク差別」に例えるのがわかりやすいかもしれない。
 たとえば萌え絵、『宇崎ちゃん』の絵のTシャツを着ていたら乗客とトラブルになり、CAから乗っている間は白Tに着替えてくれと言われ、最後は機長から降ろされたとしたらどうだろう。笑うかもしれないが、10年20年後あの手のソフトポルノ・全年齢向けポルノ=萌え絵に対する圧が強まり、公共空間で排除される可能性はないとは言えない。
 マスク事件は搭乗口でのチェックが甘かったことが全ての原因だが、同様にそこは通り抜けてしまったとしよう。萌え絵オタクが被害者なら、オタクからはひどい話だ、と同情されるはずなのだが。
 マスク着用についてはオタクに限らず、自分がマジョリティだと人はあまりそれを自覚しないらしい。仮にある属性では差別を受ける身でも、別の属性では差別をしてしまう……おなじみの差別の多層構造。

 もっとも服装の話なら、最初からドレスコードが厳しくなった社会を想定し、「短パンサンダル男が飛行機から排除されたとしたらどうか?」とした方がわかりやすいんだけどね。一般向けには。ブログとしてそれじゃ面白くないから、オタク差別で考えてみた。