うたうポリゴン

魔王K++(ケープラ)のポータル兼個人ブログ

Switch版セガサターン発ノベルゲーを堪能する

 Switch版『EVE burst error』『DESIRE』のレビューである。同じメーカー・ブランドで、EVEはシリーズ化されている第1作目になる。
 厳密にはジャンルはサウンドノベルではなく、アドベンチャーである。ボタンを押していくだけで進む、難しいアクションやRPG進行などがしんどい大人向けお手軽ノベル系ゲーム。
 90年代、私は子供だったのでセガサターンを買えなかった。世の中はPSがトレンド、据え置き機2台は買えなかった。正確には、ハードを買ってまでやりたいソフトがなかった。いや、さらに言うとサターンの大人向けちょいエロ系はリビングでやるのは無理だった。自分の部屋にテレビなどなかったから。この手のゲーム、子供がこっそりやるのはPSPの時代まで待たねばならなかった。
 EVEシリーズは、そうして通り過ぎてしまったゲームの一つだった。

概論と共通部分

『burst error』は色々移植版が出ているが、今回初めて手に取った。絵はリマスターされて綺麗に仕上がっているし、DL版で約3000円という価格がお得である。『DESIRE』は約2000円、2本まとめて約5000円(ポイントがつくので実際はもう少し安い)というお手軽さ。
 なおこの二作、どちらもシステム周りは完全に同じである。特徴は二人の主人公を切り替えながら進めるマルチサイトシステム。
 それ以外はよくあるアドベンチャータイプ、選択肢を総当たり的に、何度も押す必要があるが、リメイク版にはヒント機能がありストレスは少ない。左スティック右押しの、再度同じ選択肢を選ぶ機能もこのゲームにはよく合っていて快適。地の文に近い主人公には声なしで、相手パートでは声が出る演出は読みやすく素晴らしい。

EVE burst error

 一言で言うと、世界観とキャラデザ・声優が90年代すぎて最高の一言に尽きる。30代以上男性で当時スルーしてしまった人にはオススメ。wikipediaはネタバレ注意。
 小次郎・まりなの二人の視点で事件を追っていき、中盤から遭遇し、互いに油断のならない相手と警戒しながら共闘していく流れは王道だが見事。
 システム周りは一つだけ要注意なのが、エンディング。エピローグが二段構えで、1→エンドロール→2なのだが、初見でもエンドロール中にAボタンを押すとスキップできてしまう(あまりセーブを取っていなかったので、やり直す羽目に…)。
 以下はシナリオの惜しいところ。

  • 重要人物の割に出番の少ないストールマン・孔とアクアはもっとストーリーにからんでよかった。説明不足&消化不良感が残る
  • 金田一ばりの連続殺人が起こるが、殺人自体にほぼ意味がない。そのくせラストに5つの事件の犯人をそれぞれ入力させるという噛み合わなさ。本作はそういうゲームではない。シナリオは決して正統派ミステリというか、犯人当て推理ものではない。犯人当て謎解きを楽しめる作りならなおよかった
  • 上記の通り人が死にすぎるので、エルディア王国、このあと大丈夫か…と心配になってしまう
  • あるオッサンキャラが、主演の二人を食っている。外伝的な話ならこれでもいいが、1作目なので匙加減が甘いというか。推理しようがない後出しの新情報がドンドン出てきて、ミステリとしては微妙になってしまっている
  • 主人公二人の行動範囲が狭く、箱庭感が強い。学園ものならこれでもいいが、大人の主人公たちなのでもう少し距離感がほしい。終盤までずっと学校、大使館、事務所、寮やマンション、ホテルを往復するだけなのがやや単調

 全体のストーリーは勢いがありとても面白く、アクの強いキャラたち・美女たちで退屈しない(個人的に野沢那智さん演じるまりなの上司「本部長」が最高)。ギャグや小ネタが古い感じも、主人公のモテモテぶりも、強引な展開も、すべてが90年代。
 ノベルゲームにありがちな無駄・冗長な描写も少なく文章は読みやすい。ハードな展開と笑えるシーンの配分も文句なし。酒を飲むシーンが多く、プレーヤーも一緒に飲みながらやると飲み会みたいで楽しいかもしれない。90年代の高校生が憧れる大人の世界を体験させてくれる、別の意味で懐かしい作品だ。なお現実の大人の世界は(銃声)。

DESIRE

 全長2キロほどの孤島が舞台で、箱庭感がさらに強い。本作の主人公二人は銃も持っておらず、ドンパチはないしアクションシーンも少なめ。ギャルゲーのように男性キャラクターが少ない構造がまず物足りない。
 一人目の主人公・アルは年齢や職業こそ違うが、ゲームの主人公としてはEVEの小次郎とほぼ同じキャラクターである。なのに、ものすごく不快だった。
 これは見せ方の問題だ。男キャラクターがごくわずかで、からみがない(小次郎は男キャラも「いじる」)。ゲーム開始時点で恋人持ち(しかも近くにいるマコト)なのに、女性キャラ相手にセクハラばかりしている。にもかかわらず、なぜかモテまくる。EVEでは女性たちが一人ずつ登場していくのに対し、いきなり主要人物全員とからみだすから余計に節操がない。「間」が大きく違う。
 マコトの寝取られ話も余計だし、元々遠距離な上、アルがあの体たらくじゃなるべくしてなった、自業自得感しかない。最低男をロールプレイする意味がわからない。

 全体のストーリーも、物理的に時間が4日間しかなくあっさりしすぎというか、4日目から盛り上がるが展開も急だし、唐突すぎる。全体として尺がないのですべてが不自然・消化不良。ダイジェスト版を読まされてるようで、リメイクするならテキストも加筆修正した方がよかったんじゃ。大体のフィクションは物理時間が1、2週間で描かれるが、やっぱりそれくらいの「間」は必要だということで…シナリオライター講座かよ! 
 そして、マルチサイトシステムとは。一度も主人公を切り替えずに話が終わってしまうとは…「えっこれで終わり?」というあっけなさだが、これはどうせ他のシナリオやればわかる系なので、まあ続けましょう。
 問題はマコト編。寝取られ話自体はいいとして、いちいち主観で見せられる意味がわからない。この辺は、見せ方がかなり悪い。EVEのように、小刻みにアルとマコトを行ったり来たりさせた方がよかった。外伝・裏ルートを読んでいる気分。視点が変わることで、違うものが見えてくるのは面白いが終盤までが苦痛で、声も飛ばしながら読み進めた。
 マコト編が終わって、さらに裏ルート。これでようやく真相が…いや、これで終わりかーい! さらにもう一つあるがこれはおまけ。ムービーのみなので、これもうっかりボタンを押してしまうと即終了! 操作性が、操作性がぁ!

 同じライター(推定)でこうも違うのか…と思ったらなんと初出は94年で、95年のEVEより前である。本作でライターが進化・成長したということになる。EVEシリーズというヒット作のため、本作は犠牲になったのだ…。
 フィクションというのは、ちょっとした匙加減、見せ方で大きく印象が変わってしまうのだなあと気付きがあった。いや、ライター講座じゃないんだからそういうのは別にいらないのだが。
 いろいろと疑問は残ったまま。根本的な謎解きをせずに、読者(ゲーマー)にぶん投げて終わりってゲームとしてはいかんだろこれ。ラノベの新人賞投稿作品を読まされているような…。世界観・テーマは悪くなかった。シナリオをもうちょっと練り上げられなかったのか…クソゲーとはまではいかないが、残念なデキ。
 続編が出なかった作品と、出た作品の違いが好対照。同じくwikipediaはネタバレ注意だが、別に見てしまって構わないと思う(ひどい扱い)。声優目当てで買うくらいのつもりでいた方がいい。
 

まとめ

 当初、「二本ともおすすめです!」という記事にしようと思っていたのだが、ゲームをプレイしてみて結論が変わった。まとまりが悪くなってしまったが仕方ない。
 EVEシリーズは続編(2作目または過去編のZERO)をやりたいところだが、残念ながら最近のハードで移植されていない。また移植されたらやると思う。私がプレイしたSwitch LiteはPS Vitaのノベルゲー後継機としても優秀。この連休にぜひノベルゲーを!