劇場で2回見たが、2023年のコナン映画『黒金の魚影』は歴代でも素晴らしかった(アマプラで見れる旧作と改めて比較しても)。感想はネットであふれていると思うので、ここでは書かない。興行収入も歴代トップになるだろう(7月時点で133億円らしい)。こちらのレビューが素晴らしい(ネタバレあり)。
〈『名探偵コナン』100億突破〉クライマックスの台詞が証明した、これまで紛れもない“過小評価”だったワケ | 文春オンライン (bunshun.jp)
これまでドラえもん、ポケモンとやってきたが、コナン映画の一気レビューは難しい。原作が時代で増築され、変質しているからだ。大きく分ければ2014年『異次元の狙撃手』以降とそれ以前に二分できる。『異次元』でFBI&赤井が初登場、2016年『純黒の悪夢』で安室が初登場、コナンの味方の「大人たち」がどんどん増え(同時にコナン=新一の正体を知る者も)て、派手な事件が多くなる。初期は新一(コナン)&蘭のラブコメと殺人事件の謎解きがメインのシンプルな構成だったが、次第にアクションが派手になり、内容も『相棒』や『科捜研の女』といった大人向け要素が強くなっていく。
「黒の組織」、最初は「警察その他は何も気づいていない悪の組織」的存在だったのに今ではFBI、CIA、日本の公安からもがっちりマークされてるお尋ね者集団であり、銃火器や爆弾程度なら可愛いものだが、『漆黒の追跡者』での軍用ヘリから段々エスカレートして『黒金の魚影』でついには潜水艦まで持ち出す国際テロ組織にまで昇格した。もはやコナン一人で相対する敵ではなくなっており、仮にコナンが殺されたとても絶対いつかは壊滅させられる運命で、昔の方が「孤独な戦い」という緊張感があって好きだったが……致し方ない。
で、これからアマプラその他で旧作を見る人のためにWikipediaの一覧とは別の切り口の、早見表を作ってみた。役に立てば幸いである。2024年は予告編での情報だが、ほぼ確定。
怪キ=怪盗キッド、黒=黒の組織、京阪=平次および舞台が大阪・京都。異=舞台が異界(閉鎖空間や海外など、米花町や都心メインではない)、赤=赤井およびFBI。安=安室および公安。『探偵たちの鎮魂歌』のALLはあくまで2006年時点。
年 | タイトル ※おすすめは強調表示 | 怪キ | 黒 | 京阪 | 異 | 赤 | 安 | その他 |
1997 | 時計じかけの摩天楼 | |||||||
1998 | 14番目の標的 | |||||||
1999 | 世紀末の魔術師 | ○ | ||||||
2000 | 瞳の中の暗殺者 | 蘭 | ||||||
2001 | 天国へのカウントダウン | ○ | 灰原 | |||||
2002 | ベイカー街の亡霊 | ○ | 優作 | |||||
2003 | 迷宮の十字路 | ○ | ||||||
2004 | 銀翼の奇術師 | ○ | ||||||
2005 | 水平線上の陰謀 | ○ | 小五郎 | |||||
2006 | 探偵たちの鎮魂歌 | ALL | ||||||
2007 | 紺碧の棺 | ○ | 蘭&園子 | |||||
2008 | 戦慄の楽譜 | 探偵団 | ||||||
2009 | 漆黒の追跡者 | ○ | ||||||
2010 | 天空の難破船 | ○ | ○ | 平次 | ||||
2011 | 沈黙の15分 | ○ | ||||||
2012 | 11人目のストライカー | |||||||
2013 | 絶海の探偵 | ○ | 平次 | |||||
2014 | 異次元の狙撃手 | ○ | ||||||
2015 | 業火の向日葵 | ○ | ||||||
2016 | 純黒の悪夢 | ○ | ○ | ○ | ||||
2017 | から紅の恋歌 | ○ | ||||||
2018 | ゼロの執行人 | ○ | ||||||
2019 | 紺青の拳 | ○ | ○ | 京極真 | ||||
2021 | 緋色の弾丸 | ○ | ||||||
2022 | ハロウィンの花嫁 | ○ | 高木&佐藤 | |||||
2023 | 黒鉄の魚影 | ○ | ○ | ○ | ○ | 灰原 | ||
2024 | 100万ドルの五稜星 | ○ | 平次 |
犯行量、そして動機の身勝手さから歴代作品の犯人をまとめた、こちらの記事もおすすめ。
歴代イチのクズ犯人・山尾については以下のツリー。
コナン映画、2011年『沈黙の15分』正直そこまでデキはよくないが、犯人のクズっぷりが歴代TOPと名高いだけのことはあるので一見の価値あり。ラストの見せ場手前で犯人が退場してしまう(ED後に自供したという説明があるだけ)のが物足りないhttps://t.co/F6KAxV0Dwb
— ケープラ K++@壺を割る会 (@maoukpp) 2022年4月14日
コナンに限らずミステリの醍醐味の一つに、「クズ犯人」がある。個人的に好みなのは、黒の組織だったり『ハロウィンの花嫁』のようなプロの犯罪者より、豹変するタイプ(役者の演技力も見所)。そして声高らかに犯行を認め、推理の答え合わせをしてくれる。犯人の動機はだいたい、最初の犯行はまだ共感できるが、それを隠蔽しようと新たな犯行に走り、狂ってしまったパターンが多い。その辺の背景や見せ方も重要である。