うたうポリゴン

魔王K++(ケープラ)のポータル兼個人ブログ

フジテレビの会食・会合ガイドラインを検証する

 この記事の続き。あれから2か月ちょっと経った。
maoukpp.hatenablog.jp

 ゆうべ、フジテレビ第三者委員会の調査報告&社長会見だった。この一連の事件の論点は多岐にわたるが、私が最も関心があったのは再発防止策としての会食の扱い、だった。
 第三者委員会の報告書でも、この接待文化は【社員、アナウンサーらが取引先との会合において、性別・年齢・容姿などに着目され、取引先との良好な関係を築くために利用されていた実態はあったというべきであり、不適切である】と明確に批判されている。
 既にフジテレビは2月末に会食・会合ガイドラインを出していたようだ。あくまで内規なので、公式サイトでPDFが読めるわけではなく詳細を知ることはできないが、既に記事になっていた。
 以下の2記事を元に、検証していこう。私は前回記事で、巧妙な手口からこれはもう「会食を原則禁止にするしかない」と書いたが、その予想は外れた。かなり細かいルールとなっているが、これで中居事件の再発防止になっているのか、じっくりと見ていきたい。
www.dailyshincho.jpjisin.jp

  • 夜22時まで、3時間制。二次会禁止

 性加害に時間は別に関係ない。二次会も、一度解散したことにしてこっそりまた会うことは可能。

  • 目的、参加者(役職及びフルネーム)、日時、場所(店名等)、予想費用について事前に上長に報告し、承認を得る

 場所が誰かの自宅マンションはNGになるとしても、これも事前報告するだけで中居BBQ会のような会合は十分可能。芸能人だからと、場所も個室や人目につかない会場は普通にあり得る。

  • 会合が終わった後も、上長は、人権侵害やその恐れが生じていないかどうか、後日すみやかに実態の把握に努める

 具体的に何をするのかよくわからないが、上長はとにかく部下を気遣えということか。事件後の発覚を早期かつ容易にするという意味では評価できるが、再発防止にはなっていない。

  • 会食場所、人数、参加者の人選、会食時の座席配置まで含め、「開催の必要性や態様・方式」について、第三者に説明が可能かどうかを事前に十分に検討しなければならない

 座席など会が進めばどうとでもなる。人選を厳しくすることで、番組などに直接関係のないアナウンサーが呼ばれることは避けられるかもしれない。しかしそれも、こっそり増援を呼ぶことは可能(その分の飲み代は自腹としても)。

  • 会食の帰りは、特に異性2人が1台のタクシーなどに同乗することは禁止する

 週刊誌などに撮られないための対策にしか見えない。つまり、会食直後でなければ別に「お持ち帰り」してもいいわけだ。


 このルールは一体なんのためなのか。中居事件の再発防止策には全くなっておらず、会社としての体面を守っているだけだ。結局、「個人的に連絡先交換して、恋愛含めた交際をするのは自由」な点は何も変わっていない。プロデューサーやMC芸能人といった権力者と、若いアナウンサー=出演者という権力勾配のある関係でそれをすることに問題があったのに、根本は変わらず。つまり今後、似た事件が起きた時に、「会社としての飲み会は適切でした!」というアリバイを作りたいだけ。事件のきっかけとなった飲み会を遡及しやすくはなるが、再発防止策としては全く機能していない。会社としての直接的なメリットは経費削減くらいだ。事件そのものを防ぐ気はなく、事件が起こったら被害者を早めにケアして、若い女子アナの休職や離職を防ぎたい、という狙いはあるだろうがどこまで機能するか。

 会食の原則全面禁止では反発が予想されるし、逆に人権無視とも言われてしまう。そう、「自由」と「人権」の天秤をどうするか、がこの再発防止策の要なのだった。ただ、やはりというか被害者のことを第一に考えたルールではなかった。残念ながら、これがフジテレビの答えだった。他社も追随するにしても、世の中に大きな変化はないだろう。公的な、会社経費の飲み会は忘年会くらいにして、あとは個人間でやりましょう、と地下に潜るだけだ。あくまで業務外で自由参加の、任意の飲み会ですよ! プロデューサーなど局員は制作費(会社としては経費)を使った「豪遊」はできなくなり(ホテルのスイートルーム38万円の飲み会をロケ代として計上したなど)女性を釣りづらくはなる。ただ、権力関係がある以上自腹で鳥貴族でも別に差し支えないわけだ。最終的にはホテルや自宅に連れ込むことが目的なのだから。
 枕営業や性的上納という構造は世の中から簡単には消えないし、今後も脈々と続いていくのだった。ちゃんちゃん。